独学が続かないのは意志のせいじゃない — 続く仕組みの作り方
宅建の勉強を独学ではじめて、3日でやめました。次に買い直した問題集も、たぶん2週間くらいで机の上の飾りになりました。そのときは「自分は意志が弱い」で片づけていたのですが、同じことを食事の記録でも、語学のアプリでも繰り返しているのに気づいて、さすがに原因の見立てが間違っているんじゃないかと思いました。
そこから学習ツールを自分で作りはじめて、今は宅建・麻雀・方言の3つの学習系ツールを公開しています。作りながら試して、やめて、直してを繰り返した結果、続かない原因はだいたい4つのどれかに寄っている、というところまでは言えるようになりました。この記事はその4つの話です。
1. 再開コストが高すぎる
いちばん効いていたのはこれでした。続かないというより、一度途切れたあと戻ってこられない。
紙の問題集で勉強を再開しようとすると、実際にはこれだけの手順を踏みます。カバンから問題集を出す、ペンを探す、前回どこまでやったか思い出す、答え合わせ用に解答編を開く、ここでようやく1問目。5ステップです。元気な日はどうということはないのですが、22時に帰ってきて疲れている日には、この5ステップの前で確実に負けます。
だから宅建GYMを作ったとき、最初に決めたのは「開いた瞬間に、もう問題が出ている」でした。ホーム画面のアイコンをタップする。それだけ。前回どこまでやったかはツールが覚えているので思い出す必要がなく、「前回の続きから」を押せば途中から再開できます。答え合わせも即座に出ます。1ステップです。
ここで大事なのは、やる気を出させる工夫を足したのではなく、やるまでの手順を引き算しただけという点です。継続の話になると「モチベーションをどう保つか」に行きがちですが、自分の場合、モチベーションは足す対象ではなく、消費されないように守る対象でした。
2. 1回の単位が大きすぎる
「今日は1章やる」と決めると、1章やる時間が取れない日は0章になります。これがまずい。0の日が2日続くと、3日目には「もう無理だな」という気持ちが来て、そこで終わります。
なので、単位をとにかく小さく切りました。宅建GYMの「今日のワークアウト」は10問です。○×形式のスピードモードは20問ですが、こちらは1問数秒なので体感はもっと短い。信号待ちでも終わります。
単位を小さくして分かったのは、10問やった日と0問の日の差は、10問と50問の差よりずっと大きいということでした。数字の上では40問の差のほうが大きいのに、体験としては「今日もやった」と「今日はできなかった」のあいだに断層があります。連続日数を表示するようにしたのは、この断層を可視化したかったからです。数字を伸ばすゲームにしたいというより、「ゼロにしない」ことだけを目標にしてほしかった。
ちなみに、これは麻雀のツールでも同じでした。雀トレで「まず1局打ってみましょう」にすると、東南戦のつもりで開いた人が15分拘束されます。だから一局戦を選べるようにして、レッスンも1課ずつに切ってあります。
3. 何をやればいいか自分で決めさせている
意外と重いのがこれです。問題集を開いたときに「今日はどこをやろう」と考える時間が、実は毎回発生しています。しかも独学だと、自分が何が苦手なのかが正確には分かっていません。分かった気になっているだけで、たいてい「解いていて気持ちいい得意分野」を無意識に選んでいます。
これを解決するために、宅建GYMには「今日のワークアウト」というモードを置きました。弱点になっている分野の問題と、まだ解いていない新しい問題を、ツール側が混ぜて出します。ユーザーは何も選ばなくていい。選択肢を出さない、というのが機能です。
並び順には間隔反復の考え方を使っています。間違えた問題は近いうちにまた出る、正解し続けている問題はだんだん出てこなくなる、という仕組みです。もともとは単語カードの手法で、目新しいものではありませんが、これを自分で紙のカードでやるのは現実的ではない。ツール側でやると勝手に効きます。
「弱点特訓」で苦手分野だけを集中的に叩く、「復習ノート」で間違えた問題だけをもう一度回す、といったモードも用意していますが、これは自分で選びたい人向けです。基本は何も考えずワークアウトを押すだけで成立するようにしてあります。
4. やった記録が残らない
紙の問題集の弱点はここにもあります。3週間やって、自分がどれだけ進んだのかが分からない。ページ数は進んでいても、それが合格ラインにどれくらい近いのかは見えません。手応えのない努力は続きません。
なので、記録は多めに出しています。総合正答率、分野別の到達度、解いた問題数、最長連続日数、マスター済みの問題数、直近4週間でトレーニングした日のカレンダー。それから実績バッジ。
ただ、ここは作りすぎると逆効果になるとも思っています。数字を増やすこと自体が目的になると、簡単な問題ばかり解いて正答率を上げにいく、みたいな行動が出る。だから宅建GYMでは、本試験と同じ50問構成(権利14・業法20・法令上の制限8・税その他8)の模試を別に用意して、そこでの合格ライン判定を「本当の現在地」として見られるようにしました。日々の数字はモチベーションの燃料、模試の判定は実力の物差し、と役割を分けています。
まとめ:仕組みは自分で作れる
4つ並べましたが、要するに全部「意志の力を使わなくて済むようにする」という一点に集約されます。
- 再開コストを下げる — 開いた瞬間に始まる状態にする
- 単位を小さくする — ゼロの日を作らないことを最優先にする
- 選ばせない — 今日やることは道具の側が決める
- 記録を見せる — ただし数字の目的化には注意する
これはツールを作る人だけの話ではなくて、紙とアプリの組み合わせでも同じことができます。問題集を開いたページのまま伏せて机に置いておく(再開コストを下げる)、1日3問と決める(単位を小さくする)、やる範囲を前日の夜に決めておく(選ばせない)、カレンダーに丸をつける(記録を見せる)。道具が何であれ、考え方は変わりません。
自分の場合はプログラムを書くのが好きだったので、道具そのものを作るほうに行きました。その過程で出した失敗についてはUIの失敗5つに、データをどこに保存するか迷った話はこちらの記事に書いています。すきま時間で使えるようにするための設計は「片手・立ったまま・1分」を前提に作るということにまとめました。
2026年8月13日公開
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