親が亡くなった後、遺品整理を業者に頼む前に自分でやる3つのこと
この記事は、親御さんを見送ったあとの片付けについて、公的な資料と専門家の解説記事を読んで整理したものです。僕自身が遺品整理を業者に頼んだ経験談ではありません。そのぶん、法律や統計の数字は原文にあたって確認し、調べた日を本文に書いています。
厚生労働省の「令和6年(2024)人口動態統計(確定数)の概況」によると、2024年の死亡数は1,605,378人で、過去最多でした。前年より29,362人増えて、4年連続の増加です(2025年9月16日公表の報道発表資料で確認)。家族を見送る人が増え続けている以上、「遺品整理をどうするか」は、これから多くの人が一度は考えることになります。
業者の見積もりを取る前に、自分たちで先に済ませておくと後悔が減ることを3つに絞りました。
1. 処分する前に、残す書類と財産を確認する
片付けの順番でいちばん失敗しやすいのは、「大きな物から捨てる」ことです。解説記事を何本か読むと、どれも共通して、通帳・印鑑・権利証(登記済証・登記識別情報)・保険証券・年金関係の書類といった「あとで手続きに要る物」を先に探すよう勧めています。業者が入ってからでは、段ボールの中身までは確認してもらえないことが多いからです。
探す物を、手続きの側から逆算して決めておくと迷いません。
- お金の手がかり:通帳、キャッシュカード、証券会社や保険会社からの郵便物、ネット銀行の利用明細(紙で来ないことも多い)
- 不動産の手がかり:固定資産税の納税通知書、権利証、賃貸なら契約書
- 借金の手がかり:督促状、ローンの返済予定表、クレジットカードの請求書
- 本人確認と連絡:年金手帳、マイナンバー関係、年賀状や住所録(誰に知らせるかの手がかり)
借金の手がかりを一緒に探すのが大事です。プラスの財産だけでなく、マイナスの財産も把握しないと、次の2番目の判断ができません。
もうひとつ、家族や親族で「残す基準」を先に話しておくことも勧められていました。写真や手紙、趣味の道具のような思い出の品は、人によって大事さが違います。ひとりが黙って決めて処分してしまうと、あとで親族の間に溝ができやすいからです。全員が集まれなくても、写真を撮って共有し、「欲しい物があれば先に言ってください」と期限を切って声をかけるだけで、後悔はかなり減らせます。業者に作業日を決めてもらうのは、この声かけが終わってからで遅くありません。
2. 相続放棄の可能性があるうちは、物を処分しない
ここがいちばん知られていない落とし穴です。民法では、相続人が相続財産の全部または一部を処分したときは、単純承認(そのまま相続を引き受けたこと)をしたものとみなされます(民法第921条第1号)。単純承認をしたあとは、原則として相続放棄ができません。
相続放棄は、自分のために相続が開始したことを知った時から3か月以内に、家庭裁判所に申し立てる必要があります(民法第915条第1項。期間は事情により家庭裁判所に伸長を求められます)。借金が多いかもしれない場合、この3か月の間に、価値のある物を売ったり、預金を使ったり、家財をまとめて処分したりすると、放棄できなくなるおそれがあります。
| 状況 | 片付けの進め方 |
|---|---|
| 借金はなさそう・財産も少額 | 1の確認を終えれば、業者の見積もりに進める |
| 借金があるか分からない | 調査を先にする。売却・廃棄・解約は決めるまで止める |
| 放棄を考えている | 遺品に手を付ける前に、家庭裁判所や弁護士・司法書士へ相談する |
どこまでが「処分」に当たるかは、個々の事情で判断が分かれます。ごみ同然の物の廃棄や、形見としてのわずかな物の持ち帰りまで直ちに該当するとは限らないとされていますが、僕の側で線引きを断言することはできません。迷うなら、片付けに入る前に専門家へ一度確認するのが安全です。
3. 見積もりは複数・書面で、契約の前に確認する
業者に頼むと決めたら、次は見積もりの見方です。複数の解説記事で共通していたのは、次の4点でした。
- 2〜3社から見積もりを取る:部屋の写真だけで金額を出す業者より、現地を見て出す業者のほうが、当日の追加料金が出にくいとされています
- 内訳が書面で出るか:作業人数・車両・処分費・買取の差し引きが分かれているかを確認します。「一式」だけの見積もりは比べられません
- 残したい物を、作業前に口頭ではなく書面で伝える:国民生活センターには、残してほしい物が処分されたという相談が寄せられていると紹介されています
- 不用品の運搬・処分の許可:家庭から出る不用品は一般廃棄物にあたります。収集運搬には市区町村の許可が要るため(廃棄物処理法第7条)、許可を持つ業者か、許可業者と提携しているかを聞いておくと安心です
業界が拡大して業者の数が増えたため、品質の差も大きいと言われています。ただし、業者の総数について僕が出典を確認できた数字はまだ無いので、ここでは数字を書かないでおきます。
1で書いた「先に自分でやる」部分は、見積もりにも効いてきます。残す物を先に取り分けておけば、作業量が減るうえ、貴重品の取り違えも起きにくくなります。
期限の早見表
遺品整理と同じ時期に動く手続きの期限も、先に把握しておくと、片付けのペースを決めやすくなります。
| 手続き | 期限 | 根拠 |
|---|---|---|
| 死亡届 | 死亡を知った日から7日以内 | 戸籍法第86条 |
| 相続放棄・限定承認 | 相続の開始を知った時から3か月以内 | 民法第915条 |
| 相続税の申告・納付 | 相続の開始を知った日の翌日から10か月以内 | 相続税法第27条 |
| 不動産の相続登記 | 取得を知った日から3年以内(2024年4月1日から義務化) | 不動産登記法第76条の2 |
遺品整理そのものに法律上の期限はありません。ただ、賃貸住宅なら家賃が発生し続けますし、実家の売却を考えるなら、固定資産税の負担や相続登記の期限が背中を押してきます。期限の決まっている手続きから順番に確認していくと、片付けにかけられる時間が見えてきます。
まとめ
業者に電話する前に、手を動かしておくと迷いが減ることを3つ書きました。
- 先に探す——通帳・権利証・借金の手がかりなど、手続きに要る物を処分の前に取り分ける
- 放棄の可能性があれば止める——3か月の間は、売却・廃棄・解約を慎重に。迷ったら専門家に一度確認する
- 見積もりは書面で比べる——複数社・内訳つき・残す物の指定を書面で・許可の有無を確認する
次の1アクションは、「通帳と郵便物の束を1か所に集めて、借金の手がかりがあるかを見る」ことです。ここが分かれば、業者に頼むかどうかだけでなく、相続の判断も進めやすくなります。
なお、この記事は一般的な情報の整理で、個別の事情への法的な助言ではありません。実際の手続きは、家庭裁判所、司法書士、弁護士、税理士など専門家に確認してください。
同じく制度を一次情報までさかのぼって整理した記録として、個人店がPOSレジを選ぶ前に決めておく3つのことと、「AI導入に補助金は使える」を読んでみた話もあわせてどうぞ。
2026年10月20日公開
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