相続した実家が空き家になったとき、解体と売却のどちらが先か。決める前に確かめる3つの日付
この記事は、公的な資料と解説記事を読んで整理したものです。僕が実家を解体した経験談ではありません。数字と条件は、確認した日を本文に書いています。
先に答えを書きます。「解体が先か、売却が先か」に、全員に共通する正解はありません。ただ、順番を決めるのは気持ちではなく、3つの日付です。1つ目は特例の期限、2つ目は毎年1月1日、3つ目は解体後1か月の登記の期限です(いずれも2026年10月21日時点の公表資料に基づきます)。この3つを先にカレンダーに書き込めば、解体の見積もりを取る前に、順番の候補がかなり絞れます。
背景にある数字も置いておきます。総務省の令和5年住宅・土地統計調査では、全国の空き家は約900万戸で過去最多、住宅全体の13.8%でした(時事通信の報道と国土交通省の資料で2026年10月21日に確認)。親御さんの家を引き継いだあとに「この家をどうするか」と悩むのは、珍しいことではなくなっています。
| 日付 | 何が決まるか | 出典 |
|---|---|---|
| ① 相続開始から3年を過ぎる年の12月31日(かつ2027年12月31日) | 売却益から最大3,000万円を差し引ける特例を使えるか | 国税庁 タックスアンサーNo.3306 |
| ② 毎年1月1日 | 住宅が建っている土地として固定資産税の軽減を受けられるか | 横浜市の住宅用地特例の説明(賦課期日) |
| ③ 解体した日から1か月 | 建物の滅失登記の申請期限 | 不動産登記法第57条(法務局の資料で引用) |
この表がこの記事の中心です。以下、1つずつ出典と一緒に見ていきます。
1. 日付① 売却の特例には期限がある
相続した空き家を売るときに使える特例が、「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」です。国税庁のタックスアンサーNo.3306(令和8年4月1日現在法令等と記載)によると、主な条件は次のとおりです(2026年10月21日に原文を確認)。
- 国税庁の記載で、2016年4月1日から2027年12月31日までに売ること
- 相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること
- 国税庁の記載で、売却代金が1億円以下であること(同ページの2026年10月21日時点の記載)
- 被相続人が住んでいた家屋が昭和56年5月31日以前の建築であること
- 国税庁の記載で、2024年1月1日以後の売却で、相続人が3人以上いる場合、控除の上限は3,000万円ではなく2,000万円(同上・2026年10月21日時点)
- 売る場所の市区町村から「被相続人居住用家屋等確認書」の交付を受け、確定申告書に添付すること
「相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日」は、たとえば2025年3月に亡くなった場合、2028年12月31日です。ところが特例そのものの期限が2027年12月31日なので、実際に使える期限は早いほうになります。この2つの日付は別々に書いておくことをおすすめします。
解体との関係は「その後の使い方」で決まる
建物を壊して土地として売る場合、国税庁は次の3点を求めています(同ページの記載・2026年10月21日時点)。相続のときから壊すときまで、事業・貸付け・居住に使っていないこと。相続のときから売るときまで、同じく使っていないこと。壊したときから売るときまで、建物や構築物の敷地にしていないこと、です。つまり、壊したあとに駐車場や資材置き場にしてから売ると、条件を外れるおそれがあります。
FPや元国税専門官の解説記事では、親の生前に更地にしてしまうと、この特例の前提である「相続開始の直前まで親が住んでいた家」に当たらなくなるおそれがある、と繰り返し注意されています。何本かの解説は、相続前の解体で数百万円の税負担が生じた例を紹介していました。個別の事情は税務署や税理士に確認してください。
| 順番 | 特例で見るところ | 自分で確認すること |
|---|---|---|
| 建物を残して売る | 昭和56年5月31日以前の建築であること。建物を残す場合は、耐震基準を満たすことも求められる(自治体資料) | 登記簿の築年月日/耐震の証明が取れるか |
| 解体してから売る | 解体後の土地が、相続から売るときまで事業・貸付・居住に使われず、解体から売るときまで建物や構築物の敷地にもなっていないこと | 解体後に駐車場や資材置き場にしていないか |
| 売ってから解体する | 買主が解体する形でも使えるかは、条件の細部まで国税庁と自治体の資料で確認が要る(僕は条件の細部を断定できない) | 市区町村の窓口で「確認書」の交付条件を聞く |
2. 日付② 1月1日で固定資産税が決まる
解体の時期を考えるとき、もう1つの日付が毎年の1月1日です。住宅が建っている土地には、固定資産税と都市計画税の軽減(住宅用地の特例)があります。横浜市の説明では、次のとおりです。
| 区分 | 固定資産税 | 都市計画税 |
|---|---|---|
| 小規模住宅用地(200㎡以下の部分) | 価格の6分の1 | 価格の3分の1 |
| 一般住宅用地(200㎡を超える部分) | 価格の3分の1 | 価格の3分の2 |
この特例は「1月1日(賦課期日)現在の状況」で判断される、と同じページに書かれています。ここからは僕の読みですが、1月1日に建物が建っていればその年度は特例の対象のまま、年内に壊して翌年の1月1日に更地なら、翌年度から軽減の対象外、という流れになるはずです。壊す時期が12月か1月かで、翌年度の負担が変わりうるわけです。実際の扱いは自治体で細かく違うので、解体の見積もりを取る前に、市区町村の固定資産税の窓口で確認してください。
逆に、放置にも税の影響があります。2023年6月14日に公布された改正空家法(同年12月13日施行)で、放置すると特定空家になるおそれのある「管理不全空家」への指導・勧告が始まり、勧告を受けるとその敷地は住宅用地の特例から外れる、と国土交通省や自治体の資料にあります。「壊すと税金が上がる」「放置しても上がることがある」の両方があるので、売る時期を決めてから逆算するのが、結局いちばん安全です。
解体費用の坪単価については、僕が出典を確認できた一次データがまだありません。ここでは数字を書かず、複数の業者に書面で見積もりを取って比べる、とだけ書いておきます。
3. 日付③ 解体したら1か月以内に登記する
登記まわりで押さえることを、先に3つ並べます。
- 期限は、滅失の日から1か月以内(不動産登記法第57条・法務局資料の引用を2026年10月21日時点で確認)
- 共有なら、共有者の1人から単独で申請できる(弁護士事務所の解説・2026年10月21日時点の確認)
- 相続登記は、取得を知った日から3年以内(2024年4月1日に義務化)
建物を取り壊したら、法務局に「建物滅失登記」を申請します。不動産登記法第57条は、表題部所有者または所有権の登記名義人に、滅失の日から1か月以内の申請を求めています(法務局の資料での引用を確認)。出典の確認は2026年10月21日時点です。正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になりうる、と解説されています(過料の根拠条文は第164条。法務省ページでの直接確認は済んでいないので、この点は参考情報です)。
共有の建物では、共有者の1人が単独で申請できるとされています(弁護士事務所の解説を参照)。登記が残ったままだと、固定資産税の通知が来続けるおそれがある、との指摘もあります。解体業者に「滅失登記の書類(取壊し証明書)をいつもらえるか」を最初に確認しておくと、1か月の期限に間に合いやすくなります(期限は上の出典のとおりです)。
なお、相続登記は、2024年4月1日から義務化され、取得を知った日から3年以内の申請が必要です。順番としては、相続登記を済ませたうえで、解体や売却を進めるのが基本になります。
仮の試算で見る、順番による差
特例が使えるかどうかで、手元に残るお金はどのくらい変わるのでしょうか。他の解説記事でも似た試算が出ていますが、ここでは条件を僕が置き直して、3,000万円控除の効き方だけを見ます。次の表は実在の物件ではなく、説明用の仮の数字です。試算の時点は2026年10月21日です。税率は、長期譲渡所得の所得税15.315%と住民税5%を足した20.315%を使っています(税率は解説記事の記載で、国税庁の原文での確認は済んでいません)。
| 項目 | 特例を使えない場合 | 特例を使えた場合 |
|---|---|---|
| 売却額 | 1,800万円 | 1,800万円 |
| 取得費(不明なので売却額の5%と仮定。仮の数字・2026年10月時点) | 90万円 | 90万円 |
| 譲渡費用(解体費として150万円と仮定。仮の数字・2026年10月時点) | 150万円 | 150万円 |
| 特例の控除 | なし | 3,000万円(利益が控除額に収まるため課税は0円) |
| 税額(税率20.315%と仮定。仮の数字・2026年10月時点) | 1,560万円 × 20.315% ≒ 317万円 | 0円 |
表の読み方をまとめます(上の仮の数字・2026年10月時点の試算です)。
- 特例が使えないと、仮の条件では税額が約317万円になる
- 特例が使えると、利益が控除額に収まるので税額は0円になる
- 解体費は、どちらの場合も譲渡費用として差し引く前提で置いた
この差は、売る日が「相続から3年の年末」に間に合うかどうか、解体の順番が条件に合うかどうかで決まります。解体費用は、特例を使える場合も差し引けるので、解体を先にするほうが得とは限りませんし、その逆でもありません。
まとめ
順番を決める前に、3つの日付を確かめます。
- 日付①——相続開始から3年を過ぎる年の12月31日と、2027年12月31日の早いほうを、売却の締め切りにする
- 日付②——毎年1月1日の状況で固定資産税が決まる。解体の時期は、売る時期から逆算して市区町村に確認する
- 日付③——解体したら1か月以内に滅失登記(出典は本文のとおり)。業者に書類の出し方を先に聞く
次の1アクションは、登記事項証明書で家屋の建築年月日を見て、昭和56年5月31日以前かどうかを確かめることです。その場で、相続開始日から数えた「3年を過ぎる年の12月31日」もカレンダーに書いておけば、売却の期限が見えてきます。
なお、この記事は一般的な情報の整理で、個別の事情への税務・法律の助言ではありません。実際の判断は、税務署、市区町村の窓口、司法書士、税理士など専門家に確認してください。
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2026年10月21日公開
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